ーーーーーメルマガ『 チクタク No,29』  6,Dec,2004ーーーー
すっかりご無沙汰していまして、編集作業も滞り気味でご心配を御掛けして
います。
最近は多機能時計や上宮彫刻、再修理等困難で時間と神経を使う仕事が縦続
きで相変わらず時計に埋もれた生活の愉しい毎日です。それも、名だたる銘
品が偶然にこれほど工房に揃うとは、眺めているたけでも圧巻です。
ただ、腰痛が悪化して脚は痺れる程になり診察を真剣に考えています。どう
も、悪い姿勢で電脳を夜中まで操作している(夜の仕事)のが原因とか、皆
様も正しい姿勢で、休み休み電脳生活をエンジョイ下さいませ!

29号は、見切り発車で発信させて頂きます。  
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ー三河巡礼回想ー                     <白雲木さん>

早いもので、あの日からすでに一月あまりが過ぎようとしています、三河巡礼、、、
夢のようなひと時でした。初顔の私のような若輩者を暖かく受け入れていただき
旅費の援助までしていただいたことに、私は感激しました。皆様の暖かい心に、感謝いたします。

戸田邸討ち入りは、私にとってまさに未知の体験でした、あれだけの時計に囲まれたことも初め
てです。古時計に興味を持ち始めた当初購入した「アンティーク古時計」、その時計たちが目の
前にある!なにかこう、映画の中に入ってしまったというか、本の世界に自分がそのまま入り込
んでしまったような、不思議な感覚に襲われました。幻の時計、伝説の時計、貴重な時計があれ
だけ並ぶのを見るのは、覚悟していたとはいえ、込み上げるものを、おさえることができません
でした。

印象に強く残ったのはやはりハートのヴァイオリン。実物は私が想像していたものより、幾分大
きく、その存在感は、あれだけの時計の中にあってひときわ輝いていました。当時あの時計を作
成したハート製作所の職人達は、なんとすばらしい感性を持っていたのでしょうか。感性の時計
といえば、あの金魚鉢も忘れることはできません。非常に簡単なギミック、決して複雑なつくり
ではないのに、いくら見ても飽きがこない。そしてあのうねりのある球体ガラス、なんとも言え
ない味がありました。実のところ私は置時計にはあまり関心がなかったのですが、あの時計は今
も私の心を捉えて放しません。

今回の巡礼は様々な時計を見させてもらうという、またとない経験をすることができました。
が、しかしそれ以上に時計を愛する方々と時間を共有できたことが、私にとっては何より大切な
経験でした。人と人との縁をつなぐ時計の不思議な力を、改めて実感させられました。

最後に、この計画を立案して戴いた井上様、そして戸田様に心よりお礼申し上げます。そして皆
様方、また再会できることを楽しみにしております。ほんとうにありがとうございました。

       2004年 9月 29日 紅葉はじまる、天塩岳近くにて

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ー中越地震時の報告ー       <源三>


先ほどはお電話ありがとうございました。
また、メールでのお見舞いもありがとうございます。
電話が終わってあれから何機かやはり余震により止まりました。
どうも?キンツレは地震に弱いようです(謎)あと、装飾琺瑯J2機もです。
5,6回ほど余震がきましたが、止まらなかったのは、GB柱時計、J5機
、鳩時計5機、フクロウ分銅式、キンツレウエスト置時計のみでした。

さて、職場ですが、ようやく本日 営業再開となりました。
私的にはかなり心残りです(あまり状態がよろしくなく強行オープンしたので)
あまりひどい状態だと、大切なお客様を減らしかねないからです。。

メールを綴りながらもまたも余震・・・全くもう寝る時間なのに・・・
暦でも上司が言うには今年は、あまりいい年ではないようです。。
改めて地震の怖さを実感しました。

そちらも万一に備えて下さいませ。

10月18日に江戸で業界の会議出席の折に、北関東在住の源 三さん宅を訪れ
8帖部屋にある窓と戸以外の壁一杯に掛け時計が、チクタクと歓迎してくれました。
棚に空間が無く置き時計が鎮座まし各メーカーのビリケン型ウエストが整然と、
イヤ、雑然が正しい!
時打ちの瞬間の騒音が8帖実に心地よく響き渡りました。源三さんの友人が遊びに
来でこの音を聞いて帰ったら、2度ともう来ないそうです!

その1週刊後の地震がこの禁断の部屋を襲いました。     亞陀
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ー中越地震お見舞い申し上げますー    <いいパパさん>

中越地震の状況に昨今の異変/自然の脅威を痛感しています。
被害に合われた方には心よりお見舞い申し上げます。

私所在の岡山県T市は先日の台風の土砂くずれで5名が亡くなり(車で10分のとこ
ろ)ましたが,私の自宅は山手で,裏が竹やぶですので,竹の根がネット状になって
いますから安心しておりましたが,根の下に雨で空洞部分が出来,かなりの水が出
て,家のまわりの溝が溢れ出る状況となり,急遽仕事を早退し,土嚢を積み,難はさ
けられました。

もし神がこの世にいるとするのなら,「人がやるべき姿を間違っていませんか?」と
警告しているみたいにも感じることもあります。

ご縁がある方の今後の安全とご健康を願っております。
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ー中越地震に被害に遭われた時計達にお見舞い申し上げますー  <白雲木さん> 

今朝おきてニュースをみて驚きました。新潟地方、大変な被害です。

いち早い復旧をお祈りするばかりです。

このような地震に遭遇したら、壁に掛けてある時計がいち早く気になるのは、時計道
を邁進される方々の性ですね。

私も地震があったら壱番最初に時計は大丈夫かと、心配してしまいます。

とにもかくにも、チクタク読者と時計達が今回無事であればよいのですが、、、、。
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ー突然ゼンマイが切れてしまい大変な事になった事例ー         亞陀

ドイツの銘品グスタブベッカーが駆動中にガーンと騒音を発して打ち方機能が停止しと
持ち込まれ、これはゼンマイ切れなのでユンハンスを分解してゼンマイだけを
採り出して流用すればと安易な気持ちで即入院。
寸暇を惜しんで、慎重に分解して仰天!厚さ2mmの香箱歯が診た所6本がご覧のように
曲がって変形しています。よくよく周辺を調べると他に8本も変形しているではないか。
更に連結する2番車のカナ歯車のうち1本が破断2本はヒビ割れ、ゼンマイが一瞬で全開したらしく
巨大な力が香箱と2番車が破壊しいました。『壊すつもりで直して診ます』との了解を得て手術開始。
香箱歯を薄平ペンチで修正したものの、極端に変形した歯は予想通りポッキリ折れ壊してしまった。
普通ならば、『この時計は部品がないので直りません!』の宣告で終焉を迎えるが、しかし、、、、

久々の入れ歯(刺し歯)技法を試みました。
1折れた歯の根元から歯幅一杯を一挙に細密平ヤスリで斜め断面に削り落とす。
 断面を余る削り過ぎますと、ゼンマイ迄食い込み万事休す!
2削り落とした断面に合わせ真鍮板を正確に合わせる。上下サイズは大きめに。
3合わせた真鍮に半田を浸透させる為に接触面は微妙に小さく削る。
4固めのステンレス用(松やに無し)半田で完全に固定。
5他の歯を見本として、新たに歯を削りだす。上下には連結する歯車を鑑み
 遊び幅と強度を考慮して歯を厚くして整える。
              



     *香箱歯以外のノーマルな歯こぼれの際は、遊びのある面に真鍮板を半田付けして
      2,3の歯を同時に削り出す、簡単な入れ歯技法もあります。
この2番車の折れたカナ歯3本も慎重に交換し
事亡きを得ました。当初から万が一折れた場合を想定し簡単に交換できる設計には甚だ脱帽です!


その後、ベッカーが回復したかはオーナーぞのみ識る。
ーホゾ穴詰めの話ー        亞陀
古い時計によく診られますホゾ穴詰めは、穴縁に円弧たがねで打ち込み穴を小さくして
軸径よりやや大きめの真円(普通のたがねの事もあります)に整えるのは既にご承知で
す。しかし、、
叩けば、凹みその分周辺が微妙に盛り上がりのは想像できると想います。この盛り上が
りをそのままにした物をよく見かけます。つまり平面度が損ない、注油で誤摩化しても
いずれ軸段差の抵抗が強く成りホゾ穴変形に拍車が掛かります。
盛り上がり箇所は特殊な精密ヤスリで基盤と均一平面に削り、さらに油仕上げ砥石で研
いでピカピカ面(ツライチ)に仕上げます。残念ながら通常はこの面は内側になります
ので、表からは決して見えません。勿論は歯車軸も研磨してピカピカにしてより回転を
スムーズにさせます。
分解掃除を昔から「广き油差し」と云う、訳をお分かり頂ければ嬉しく想います。まし
てやオーバーホールなんてほぞ穴を大きくしそうな言い回しで、どうも私には好きには
なれません。




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